Snuggle


「うーさぎうさぎ、何見てはねるっ」
月夜の下で歌いながらうさぎ跳びをする沢村に遭遇した。
「沢村」
微笑ましく映るその様子だったが、クリスは若干の鋭さを含む声で呼び掛ける。
「あ、クリス先輩!お疲れ様です!」
気付いた沢村が振り返りうさぎ跳びの姿勢を解く。
「沢村、うさぎ跳びはやめておけ」
内心で胸を撫で下ろしながらクリスは沢村の肩に手を置き、目を合わせて説く。
うさぎ跳びの危険性を真剣に伝えるうちに沢村の表情も硬くなる。
普段ならば見たくはないその顔も、意図が伝わっている事の現れ。
「わかりました。今後はうさぎ跳びしません!」
説明を終えると沢村から決意表明をされる。
「そうしてくれ。トレーニングのつもりでないとわかっていてもかなり焦ったからな……」
故障を誘発しやすい運動を目の前でされて、沢村の思うところは理解出来たがそれでも慌てた。
将来性を買われて一軍入りを果たしたのだから、経験を積める戦列を離れて欲しくはない。
そんな先を見据えての思いもあるが、焦ったのはもっと感情的な理由。
「すみません」
「そう落ち込まなくていい。俺がお前に元気でいてほしいだけだからな」
深々と頭を下げ終えて、それでもなお俯き加減の沢村にクリスは本音を伝える。
「いつからだろうな。俺はずっと、お前に足元を照らされているんだ」
恐らくは出会った時にそうなっていた。
先の見えない長い道の中にいたはずが、気が付けば前も先も見えていた。
「古臭い言葉だが、お前は俺の太陽だよ」
「太陽……」
現代では笑いの種になるような古い口説き文句だが、未だに人の口の端に上る理由がクリスにはわかる気がした。
笑われ語り種にされ続けられるほど愚直に心を伝えているからだ。
「じゃあクリス先輩が月ですね! 月は太陽の光で明るいって聞きました!」
「俺は月ほど大層なものじゃない」
「そんな事ないですよ! 月みたいに静かで優しくて、イメージぴったりです!」
「……沢村、コンビニに行こう」
沢村は笑うどころか受け止めた上で力説して来て恥ずかしくなる。
だが逃げてしまうには二人の時間が惜しくて、クリスはそう提案する。
「随分褒めてくれたから何か買ってやる。それで月見でもしよう」
散歩がてらの道行きと月見で、恥ずかしい言葉の応酬をうやむやにしようと歩き出す。
だが沢村がそうはさせてくれない。
「なんか俺に下心があるみたいじゃないっすか! 本当に思ってますからね! クリス先輩は月みたいに」
更に主張しようとする沢村の口を手でふさぐ。
「自分の言葉で十分恥ずかしいんだ。頼むからこれ以上恥ずかしい事を言うな」
月明かりの下では照れ隠しにも限界がある。
クリスの必死の願いに沢村が黙って首を縦に振ったので手を離す。
「行くぞ」
「はい。クリス先輩、俺団子がいいです。月見団子」
「あればな」
「なかったらコンビニのはしごです!」
「なくてもいいな」
「はい!」
きちんと要求を飲んでおとなしくなった沢村に、クリスは傍から見れば十分に恥ずかしい事を言う。
それに当たり前のように応じる沢村とは間違いなくお似合いであった。

本誌を読んでクリス先輩の慈愛に満ちたほほえみに心奪われて何か書こうと思った結果。
お前は俺の太陽だ、って大げさで笑いにされちゃうけど実際にそう感じてる人って案外いるんじゃないかなあとか思ったりする。
クリ沢の歩みを見てると、案外間違ってない気がするんですよ。太陽。

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