白川本チラ見せ

「ただいまーって、え?」
 川上が寮の部屋に帰ると鍵が開いていた。
中にいるであろう同室の住人に声をかけながらドアを開けると、そこには本来いるべきでないはずの人間がいた。
「おう、お帰り!」
「あれ、鍵かけ忘れてたか?」
 部屋の中にいたのは御幸一人。
つまり誰かが招き入れたわけではない。
となると考えられるのは施錠のし忘れなので確認のためにそう尋ねる。
「いや? 合鍵」
「はい?」
 鍵を掲げてさらりと返された御幸の答えが予想を超えていてに川上の思考がしばし停止する。
だが流してしまうにはあまりに引っかかる単語に気を取り直してそこを指摘する。
「合鍵ってお前何やってんだよ」
「いやー、ほら、俺の部屋って結構たまり場にされんじゃん? 落ち着きたい時の避難先をいくつか」
「住人の同意は?」
「キャプテン権限!」
 清々しく答えられたのが苛立ったので無言で没収しようと御幸に掴みかかる。
「待ってノリ! 勝手に入ったのは謝るから! ここは俺の大事な避難先なんだ!」 
「普通は同意を得てから避難先に使うんだよ」
「お願いしますこちらに置いてください」
「変わり身早いな……」
 懇願されて川上が鍵を取り返す動きを一旦止め諭すと素早く御幸が土下座をする。
一気に下手に出られて驚きや呆れよりも尊敬に近いものを覚えてしまった。
「あんまり来るなよ?」
 土下座までされてなお拒むほどの事ではない。
御幸の言葉から転がり込む先は複数あるし頻度もそう高くないだろうと入り浸る事だけは拒否して受け入れる。
「やった! さすが最後の砦!」
「おい、最後って」
「お邪魔した部屋ここ以外全部鍵奪われた。まだ行ってないとこあるからそこも狙うけど」
 御幸の言葉に川上は自分の甘さを後悔する。
少なくとも他の避難先が出来るまでの間は御幸の急な来訪と恐らく発生するそれによる二次被害が確定した。


HARU18にて出す白川本の導入部。ここではまだ白州がいないけど、白川です。

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