白川本チラ見せ

「ノリ、これ」
 朝、学校へと向かう道すがら白州は並んで歩く川上に音楽プレイヤーを差し出す。
「ん。これ俺の」
 川上もそれに応じて己の持ち物を差し出し、それぞれの音楽プレイヤーを相手に渡す。
白州と川上が定期的に行う、お互いが知らない領分で増えた曲の確認。
「すっかり恒例だな」
「うん。今はちょっと領域決めたけどさ、最初の頃はやたら選ぶ曲かぶってたよな」
 川上がふにゃりと笑う。
楽しい思い出を懐かしんで浮かべるその笑みは初めて会った時からずっと変わらないなと白州は思う。
白州と川上の初対面。厳密に言えばそれは入部初日の挨拶だが、もっと個人的な対面は少し後。
その時までは入部したばかりだから当然だが、名前を知っているくらいの仲だった。
それが一歩踏み込んだのは、白州がとある音楽雑誌を買いに行った時。

お目当ての雑誌の前に同じ野球部員がいて、ラスト一冊のそれを幸せを見つけたような顔で手に取った。
「あ」
 自分が欲しかったもので最後の一つで先に手を伸ばしたのは知った顔で。
そんな条件が重なったからか、普段ならば無言で諦める方を選ぶ白州の口から思わず声が出る。
「ん? あ、白州だっけ?」
「そうだ。川上?」
 その声に反応して白州の方を向いた川上は知っている相手だった事に気付いて驚きの強かった表情を和らげる。
そして名前を確かめるためにそう問いかけてきた。
白州もそれに乗じて名前を確かめる。
覚えていないわけでも自信がないわけでもないが、お互いに相手を認識したと示す事が浅い付き合いには必要だ。
「ノリでいいよ。で、白州もこれ買いに来たのか?」
「ああ」
 気を遣わせてしまうかと思ったが、誤魔化す必要のない気安さを川上に感じて正直にそう伝える。
「そっか。じゃあ俺買ってくから一緒に見ようぜ」
 すると驚くほどあっさりと川上はそう提案し雑誌の会計を済ませようと歩き出す。
ちらりと視線を送り念押しするように首を傾げる事で着いてくる事を促すが、それだけだ。着いてくるのが当然ではない。
けれど言葉で求めるわけでもなく、静かに流れを作る。そんな距離の取り方がしっくり来た。


なれそめを妄想しました。

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