馬体重増減なし

「フク最近痩せたんじゃねえ?」
朝食。
夜の繁華街という華やかな戦場から帰還しての団欒の時間、学ランを脱いだフクを見てハイドが言った。
「体重は変わってないですよ?」
「なんか細く見えんだよなー。この辺とか」
ぺたぺたとフクの腰の辺りに触れるハイド。
「ハイド、俺も」
そう言って二人をぼんやり眺めていたウメが割って入って来た。
「ああ、ウメさんなら俺よりフクの事わかってますからね」
「…………うん」
しばらく間があって、ウメが肯定の返事をする。
その顔が妙に嬉しそうでハイドはおや、と思った。
ウメはあまり感情を表に出さない。
客の女たちに甘く笑って見せる事はあるが、先程の顔はそれ以上に甘かった。
このところウメは妙に機嫌が良いし、今日は特にそういう日なのだろうと思いを巡らせながらフクを解放する。
それを流れるように自分の方に引き寄せるウメ。
そしてフクの腰に触れ、おもむろにその体を抱きしめた。
「団長?」
「触るだけじゃよくわからなくて」
不思議そうにするフクにそう言いながら、ウメはフクの体に腕を回したまま、それはそれは嬉しそうな顔でしばらく動きを止める。
それを見てさらに困惑の度合いが深まる。
フクは男だ。
いくら仲の良い後輩でも男など抱きしめて何が楽しいのか本気でわからない。
自分も抱きしめてみたらわかるだろうか。
浮かんだ思いを首を振って霧散させながら、ハイドは食べかけの朝食に戻ることにした。




思いつきは某二冠馬です。
レース前にネット上にあがった画像ではあばらが浮くほど痩せてたくせに、
実際にレースになってみたら体重は全然減ってなかった件をネタにできないか頑張ってみた。
見た目は痩せたけど体重は変わってないって所しか残らなかった。

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